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Side story of "Chuya's Cooking diary"
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東京は雪。



青いソフトにふる雪は

過ぎしその手か、ささやきか、

酒か、薄荷(はつか)か、いつのまに

消ゆる涙か、なつかしや。
──北原白秋






こうして雪空を見上げると
「ありえたかもしれない自分」
を身近に感じたりするときがある。

僕とはちがう思いで、同じ空を見上げる自分。

憧れ、諦め、怒り、悲しみ、
雪のはるか向こうに在ったかもしれない、別な居場所に向けた淡い想い。


そして、今ここにいる自分に想いを還してみると、
これはこれで幸せな人生だろうと思えてくるのも不思議な感じ。



  ねぷんきえーあくぴりーかな


父に唯一教わったおまじない。
君が聞いたら発音の不味さを笑うだろうか。
君は僕と同じ身体をつかって、どんな発音をするんだろうか。


  ねぷんきえーあくぴりーかな



僕が人生を終えるとき、叶うならば、君と会ってみたい。
互いがどんな人生を歩んだのか、互いがどんなことを感じていたのか。
互いの言葉で、伝え合いたい。



蛮族の末裔は、雪が降ると、そんなことを考えたりしながら、東京で生きてる。



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カナリア沖を北上するイングランド籍商用サムブーク"Goat's Aria"号はその出港以来最大の危機に見舞われていた。

船員の半数が栄養失調で倒れている最中、一隻の武装船が追走してきている事が判明したのだ。
船尾から追走する不審船を望遠鏡を覗き込んでいたエドガー・アラン船長は舌打ちを一つ打つと、僕の方を振り返る。


「…マリア」

「はい」


「司厨長に「マズイ」と伝えてきてくれ」

「了解」


間を入れずに返事をしたものの、正直、一番聞きたくなかった命令だ。
今は、今だけは、マズイ。

きっと、船長も言いたくなかった命令なのだろう。ため息と一緒に、ねぎらいの言葉を投げてよこす。


「すまんな」

(まったくだ)


僕は、苦笑をかみ殺し、ハッチを目指して駆けていく。
その背中を追い越すように、打ちならされる鐘の音と、彼の怒号が甲板に響き渡る。


「メイン・アッパー・トップスル開け!」

「ヨーソロ!!!!」

「第三ワッチを叩き起こせ! ミズンも開くぞ!」

「ヨーソロ!!!!」


第三ワッチは午後に交代したばかりだけれど、第二ワッチは、栄養失調でほぼ全滅。今、動ける戦力は、彼らしか残っていない。

だが、第三ワッチが加わったとしても、果たして総帆展帆での航走ができるのか。
多分、フォアとメインで精一杯だろう。


(なんてタイミングの悪い…)


船長の伝言を司厨長に伝えるべくハッチをくぐりながら、僕は十字を切らずにはいられなかった。

その十字は、追い来る船を憂いたものか。それとも、これから向かう司厨室でのやり取りを憂いたものか。
そのどちらに向けたものなのか、僕自身にも分からなかったのだけれど。



誰がわたしにいえるだろう 
わたしのいのちがどこへまでとどくかを?


しだいにひろがる輪を描いて 
わたしの命は生きる

さまざまなものの上に 
ひろがる輪を

たぶん その最後の輪を 
閉じることはできないだろう


でも 
それをこころみよう
神のまわりを 
太古の塔のまわりを


わたしはめぐる
そしてわたしは
何千年も
めぐりつづける 


わたしにはまだわからない


自分が一羽の鷹なのか
あるいは大きな歌なのかが
 



リルケ
chuya's nook

"中也艦隊"の俗称。中也が船着場に出している机だけの軽食堂(breakfast nook)の呼び名が由来。
船籍登録票上の正式名は "エドガー・アラン艦隊" だが、自艦隊の船員達にもその名前を知らない者が多く、出入港手続き時のトラブルが絶えない。
William Butler

イングランド人。男。
Goat'sAria号の兵室担当航海士。あだ名は「無駄飯食い」。
プロフィール
中也
大航海時代Onlineの世界を遊びまわるぐうたら調理師・中也の落書き場所。

リンクは非歓迎と意思表示だけしておきますが、リンクされても文句は言いません。
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