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Side story of "Chuya's Cooking diary"
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カナリア沖を北上するイングランド籍商用サムブーク"Goat's Aria"号はその出港以来最大の危機に見舞われていた。

船員の半数が栄養失調で倒れている最中、一隻の武装船が追走してきている事が判明したのだ。
船尾から追走する不審船を望遠鏡を覗き込んでいたエドガー・アラン船長は舌打ちを一つ打つと、僕の方を振り返る。


「…マリア」

「はい」


「司厨長に「マズイ」と伝えてきてくれ」

「了解」


間を入れずに返事をしたものの、正直、一番聞きたくなかった命令だ。
今は、今だけは、マズイ。

きっと、船長も言いたくなかった命令なのだろう。ため息と一緒に、ねぎらいの言葉を投げてよこす。


「すまんな」

(まったくだ)


僕は、苦笑をかみ殺し、ハッチを目指して駆けていく。
その背中を追い越すように、打ちならされる鐘の音と、彼の怒号が甲板に響き渡る。


「メイン・アッパー・トップスル開け!」

「ヨーソロ!!!!」

「第三ワッチを叩き起こせ! ミズンも開くぞ!」

「ヨーソロ!!!!」


第三ワッチは午後に交代したばかりだけれど、第二ワッチは、栄養失調でほぼ全滅。今、動ける戦力は、彼らしか残っていない。

だが、第三ワッチが加わったとしても、果たして総帆展帆での航走ができるのか。
多分、フォアとメインで精一杯だろう。


(なんてタイミングの悪い…)


船長の伝言を司厨長に伝えるべくハッチをくぐりながら、僕は十字を切らずにはいられなかった。

その十字は、追い来る船を憂いたものか。それとも、これから向かう司厨室でのやり取りを憂いたものか。
そのどちらに向けたものなのか、僕自身にも分からなかったのだけれど。



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プロフィール
中也
大航海時代Onlineの世界を遊びまわるぐうたら調理師・中也の落書き場所。

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